図表でみる世界の社会問題 - OECD社会政策指標

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  • サイズ B5判/ページ数 107p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784750324746
  • NDC分類 361.9
  • Cコード C0036

出版社内容情報

OECD諸国の社会政策について「一般的な背景」「自立」「公正」「健康」「社会的結束」の5項目にグループ化した指標で明らかにする。「相対的貧困」「所得の不平等」「自殺」「就業・失業」「社会的孤立」など、国際比較可能な34指標。

はじめに
要 約
Part1 解説
 1.社会指標の目標
 2.OECD社会指標の枠組み
 3.指標の利用
 4.指標の記述
 5.本書でなにが発見できるか
Part2 OECD社会指標
 1.一般的な背景指標(General context=GE指標)
  GE1.一人当たり国民所得
  GE2.従属人口比率
  GE3.出生率
  GE4.外国人および外国生まれ人口
  GE5.結婚・離婚
 2.自立指標(Self-Sufficiency=SS指標)
  SS1.就業
  SS2.失業
  SS3.無業世帯
  SS4.働いている母親
  SS5.失業給付
  SS6.最低生活保障給付
  SS7.教育達成度
  SS8.退職年齢
  SS9.教育・職業活動に参加しない若年層
 3.公正指標(Equity=EQ指標)
  EQ1.相対的貧困
  EQ2.所得の不平等
  EQ3.子どもの貧困
  EQ4.高齢者の所得
  EQ5.公的社会支出
  EQ6.民間社会支出
  EQ7.社会支出の合計
  EQ8.老齢年金代替率
  EQ9.年金期待総額
 4.健康指標(Health=HE指標)
  HE1.余命
  HE2.健康余命
  HE3.乳児死亡率
  HE4.総保健医療支出
  HE5.長期介護
 5.社会的結束指標(Social Cohesion=CO指標)
  CO1.主観的福祉
  CO2.社会的孤立
  CO3.団体加入
  CO4.10歳台の出産
  CO5.麻薬の使用および関連する死亡
  CO6.自殺
監訳者あとがき

監訳者あとがき
 本書はOECDのSociety at a Glance―OECD Social Indicators

2005の翻訳である。この表題の文意をとれば、日本語では『一目でわかる社会の姿』といったタイトルをつけるべきであるかも知れないが、明石書店からすでに出版されているOECDの指標シリーズのタイトルとの接続性を考えて、『図表でみる世界の社会問題』とすることとした。
 このタイトルが示すように、本書は、OECD諸国において、社会政策の対象とすべき諸領域について、すべて定量的に比較できるようにすることを意図している。この場合、OECD諸国の社会政策の今日的な主要目標として留意されているのは、自立(self-sufficiency)、公正(equity)、健康(health)、社会的結束(social cohesion)の4つである。このうち、social cohesionについては、障害や貧困が原因となり、またジェンダーや人種や社会的地位による差別から生まれる社会的排除(social exclusion)をどのように除去していくか、という観点をもつものである。したがってこの用語は社会的包摂(social inclusion)に近い概念であるということができるが、やや異なる政策上の含意もあることから、ここでは社会的結束という訳語を採用している(社会的凝集力という訳語もみられるが、意味としてはほぼ同じであろう)。
 いずれにしても、本書において国際比較の対象としている社会指標の諸項目は、たんに社会状況を国別に羅列しているのではなく、明確に社会政策上の含意をもつものとして選定されていることに留意すべきであろう。
 このような本書の読み方については、「Part1 解説」の部分で懇切なガイドが付されているので、多くを繰り返す必要はないが、以下に、とくに日本人の読者として留意しておくべきいくつかの論点についてコメントしておきたい。

収斂と拡散について
 社会や経済のあり方にかんする国際比較の場合に、かならず問題となるのは、収斂(convergence)と拡散(divergence)の関係である。収斂理論によれば、経済発展の要素が社会のあり方に強く影響するという側面を重視し、経済発展の程度が社会のあり方を大きく規定することになり、したがってたとえば、一人当たりGDPを指標として、経済発展の程度が同一であれば、社会のあり方も同一のものに接近していく、ということになる。一方、各国の歴史や文化に社会のあり方がより強く規定されると考える拡散理論の場合には、社会のあり方は各国独自の姿をとると主張することになる。
 本書をつうじて示されているところでは、一方では一人当たりGDPと一人当たり社会支出とのあいだには一定の相関が示されるから、収斂理論があてはまる場面もあるが、他方で、貧困率や出生率にかんしては、一人当たりGDPとのあいだにほとんど相関はみられない。相対的貧困率についてみれば、OECD諸国のなかで一人当たりGDPが低いグループに属するメキシコやトルコとならんで、アメリカ合衆国、日本、イタリアが高い水準の国々として登場する。このことは一国の社会の姿は、たんに経済発展の程度によって自動的に決定されるというものではなく、同時にその国の伝統的な文化などの要素によって自動的に決定されるというものでもなく、一定の理念にもとづく政策体系が作用する要素が限りなく大きいことを示しているように思われる。個別的にいえば、社会支出の項において、公的社会支出と民間社会支出とを合計した社会支出の大きさが算定されているが、その解説部分において、この大きさがただちに社会支出の効果を決定するわけではないことをことわっていることのなかにも、政策的要素の作用の大きさが示唆されている。

ワークフェアとソーシャルキャピタル
 本書のなかで、この2つの言葉が明示的に示されているわけではないが、本書にかかげられている指標や解説の大きな流れとしていえば、OECD各国の有する社会問題の解決の方向、すなわち、失業や不平等や社会的孤立とそれにともなう社会的病理現象、それに福祉費用の増大にともなう財政上の諸問題を解決する方向としては2つの方向が暗示されているように思われる。
 1つは、最低限の直接的な所得保障の重要性を指摘しつつも、良好な就業機会の拡大こそが問題解決の道であるという考え方である。たとえば、ひとり親の世帯のなかでは、貧困率がより高いが、そのなかでも就業の機会のない人びとのなかにより高い貧困率が示されている。この場合、たんに教育や職業訓練のかたちをつうずる積極的労働市場政策にとどまらず、介護や保育にかかわる社会サービスの体系が重視されているのも印象的である。この点はワークフェアという用語に要約されようが、それはたんに自己責任を強調するのではなく、それを支える社会システムの重要性が重視されていることになる。
 もう1つは、孤立を防止する人と人との関係である。たんに地域を意味するわけでなく、各種の団体へのメンバーになること、さらにそのなかで積極的な活動をおこなうことが、このような社会的結束の指標として本書では採用されている。この側面は、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)という用語で要約されようが、この側面は社会政策の展開のなかで、より重視されてよい部分であると考えられる。

日本の国際的位置
 このような観点から、本書が物語る日本の位置をみると、日本の社会はアメリカ合衆国といちじるしく類似している側面があることがわかる。上述のように相対的貧困率の高さにおいて、日本はアメリカ合衆国と並んでOECD諸国のなかでトップグループに属するほか、GDPに占める比率でみた公的社会支出も、アメリカ合衆国と並んで、この点もトルコ、メキシコといった一人当たりGDPが相対的に低水準の国々とともに、OECD諸国のなかでもっとも低いグループのなかに所属している。ただ、アメリカ合衆国の場合には、医療部門にみられるように、任意の民間社会支出がOECD諸国のなかで、きわだって高い比率を示しているのに対して、日本の場合にはこの部分の比率も低いので、社会支出の合計(本書では日本の位置は示されていない)では、アメリカ合衆国の方が高いと想定される。スウェーデンやデンマークなど北欧の福祉国家とは対象的な位置にあることが本書に収録されているデータによって示されている。
 とはいえ、本書に示されている社会指標のなかで、日本がアメリカ合衆国と異なる状況にあることが示されている部分もある。アンケート調査にもとづいて、主観的な幸福感を比較していることは本書の大きな特徴といえるが、それによると、アメリカ合衆国は生活の満足度はOECD諸国の平均よりもかなり高くなっているのに対して、日本の生活満足度はOECD平均よりかなり低い。また本書では同じ主観的幸福感のデータ群のなかで、自殺率の比較がおこなわれているが、それによると、全年齢で日本はハンガリーについで、第二位となっている。アメリカ合衆国はOECD平均以下のグループに属している。なぜこのような差があられわるかについては、つっこんだ検討がおこなわれなければならないが、一定の結論は本書自体のなかに示されている。これも主観的幸福感の同じデータ群のなかで示されている団体加入率をみると、アメリカ合衆国はスウェーデンやノルウェーなど北欧諸国と並んで、トップグループの位置にある。これに対して、日本はOECD諸国の平均よりもかなり低い加入率となっている。団体の種類としては、教会・宗教、スポーツ・文化、政治・組合、その他の4種類に分類されているが、日本はそのいずれの種類においても、団体活動への参加は低水準にとどまっている。そのことがすべてを説明するとはいえないにしても、ソーシャルキャピタルの希薄さが、低い生活満足度や高い自殺率の重要な要素となっていることは容易に想定することができる。
 このような国際比較データから浮かび上がる日本の社会の姿は、一人当たりGDPの高さからみれば豊かな国(といっても本書のデータはすべて購買力平価に換算していることもあり、OECDのトップレベルとはいえず、ほぼ中位水準にあるとした方が正確である)ではあるが、所得格差が大きく、リスクに陥った場合の公共的な保障措置も相対的に小さく、そのうえ、さまざまなかたちで、社会的な包摂措置の機能も弱いため、生活についての満足度が相対的に小さい国である、というものである。
 統計的な処理についての異論や別の統計解釈の余地はむろんある。しかし、日本の社会が、ふつうの生活者からみて、かなりにあやういものとなっている、という実感は本書の国際比較とはかなりに重なり合うように思われる。本書ではこのような日本の位置がなぜもたらされているか、という点で積極的な回答を与えているわけではない。その検討は、その危うさをとり除いていく方策を樹立する活動とともに、むろんわれわれ自身の課題である。

2006年11月
高木郁朗

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