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猫語の教科書

ポール・ギャリコ著 ; スザンヌ・サース写真 ; 灰島かり訳. -- 筑摩書房, 1995.
ISBN:4480831614
総合評価:

1

猫の手貸す方もつらい、ニャ

猫になってやる。私は22年間、人間としてやらせてもらっているが、来世は絶対に猫になってやる。現代社会においてそんなことを思いながら生きているヒトは実は多いのではないだろうか。

もし貴方が「明日から君、猫ね」そう言われて猫になったとして、夢想するようなキャットライフは過ごせるのだろうか。猫なんて丸くなって寝て、寝るのに飽きたら悪戯して、そしてまた寝る。気まぐれに過ごせると思ったから「猫になりたい」なんて思うのだ。

しかし、はたしてそれは本当なのか。確かめる術は一つしかない。猫のことは猫に聞こう。そんなヒトの貴方のための一冊というのが本書である。

猫社会のことは猫に学べということで、この猫語の教科書には「猫による人間のしつけ方」が書かれている。猫語と言ってもきちんと翻訳されているのであしからず。著者の近影には何とも愛らしい猫の姿が確かにあった。猫だって楽じゃないの。そんな声が耳を澄ませば聞こえてくる。ある一匹の賢い猫がこれから成長して家猫になろうとする猫に指南するといったような語り口調で展開される。人間の私たちからすれば猫と会話しているような感覚だ。

「第2章人間ってどういう生き物?」では人間との関わり方を教えてくれる。
「男性は、コツさえつかめば、操縦は簡単です。」(p.44)
「女性は多くの点で私たち猫に似ています。女性たちはものすごく頭がいいから、けっして軽くみてはいけません」(p.50)
猫視点で人間の特徴を分析して付け入る隙が書かれている。そしてそこに合う猫なりの武器の出し方が筆者(猫)の体験談とともに綴られている。人間目線でも納得してしまう処世術には舌を巻く。この計算されたかわいさにやられてしまうことも容易に想像できる。

本書はきっと貴方を立派な家猫へと導く。猫の手も借りたいほど大変なヒトの皆さんに、猫ならではの苦労と豊かなキャットライフを。疲れたときは猫になろう。そんなときに貴方の手元に「猫語の教科書」があらんことを。


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