すぐ後ろには、追っ手がせまってきている。どうしてこうなった?違う、俺じゃない。俺は犯人じゃないー。
「ドン!」ごく普通の青年・青柳雅春は、ある日、街中で大事件に遭遇する。どうやら、パレードを行っていた首相が暗殺されたらしい。よく分からないけど、大変なことだ。すると隣にいた友人・森田が、謎めいた言葉をかけてくる。 「おまえ、オズワルドにされるぞ」(p.153) 背後で、大きな銃声が聞こえる。自分の名を呼び、威嚇する声がせまってくる。青柳は駆けだした。その時はまだ、自分の運命を知らなかった。ここから彼には、壮大な逃亡劇が待ち受けているのであった。
オズワルドとは、第35代アメリカ大統領のジョン・F・ケネディを暗殺したとされる人物だ。そして彼は、逮捕の直後に殺されている。しかしこの事件には謎が多い。よくささやかれているのは、オズワルドは犯人ではないという噂だ。彼は濡れ衣を着せられたのであり、真犯人は別にいる、という説が有力視されている。
この物語では、さまざまな人物が青柳の逃亡を手助けする。旧友たちや職場の同僚、ご近所さんなどだ。彼らは自分の危険をかえりみない。それはなぜか?間違いなく、彼らの信頼関係からだろう。主人公・青柳は、とても誠実な人物なのである。読者である私も、気づけば彼を応援しながらページを進めていた。
自分が青柳のようになったら、どうしよう?と考える。身近な人との関わりはできるだけ多くしておきたい。そして友達は大切にしたい。オズワルドにはなりたくないもんな。
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