書誌レビュー一覧 1件~6件(全6件)

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

桜庭一樹 [著]. -- 角川書店, 2009. -- (角川文庫 ; 15565 ; さ-48-3 . Sakuraba Kazuki collection).
ISBN:9784044281045
総合評価:

1

実弾が欲しかった。どこにも、行く場所がなく、そしてどこかへ逃げたいと思っていた。

思春期の少女たちが抱える、大人への不信感や社会の生きづらさ。そんな過酷な毎日をリアルに描き出す桜庭一樹による本作は、「富士ミステリー文庫」から刊行された後、「角川文庫」として新たに一般書として広く書店に並べられるようにになった作品。

主人公の山田なぎさは鳥取県の田舎に住む中学生。漁師であった父を嵐で亡くし、引きこもりの兄がいる。生きるために必要なお金という「実弾」が必要なため、高校に行かずに自衛隊を志望する現実主義の女の子。そんな彼女のクラスに美人だがかなり変人、自らを「人魚」と名乗る海野藻屑が転校してきた。現実主義のなぎさ、空想主義の藻屑、正反対の二人だが、関わっていくうちになぎさは藻屑の家庭の事情を知り、次第に藻屑に心を開くようになる。すべては生きるために、生き残るために。残酷な現実を生き抜くために主人公たちが成長する青春文学。

本作を通して私は、「物質的な豊かさ(実弾)」と「精神的なつながり(愛)」のどちらが欠けても、子どもは幸せに生きられないと感じ、本当の幸せとは何かと考えた。本作品は現実を生き抜くための「お金」や「容赦のない現実そのもの」、「力」を実弾に例え、子ども特有の「甘い嘘」「妄想」「ファンタジー」を砂糖菓子と表現している。砂糖菓子を武器にして戦う子どもたちに対して、大人は現実を突きつける。儚く脆い子どもたちは従うしかなく、なりたくない大人になり、次の子どもたちに実弾を放つ。この「子どもと大人の超えられない壁」の描き方が読んだ後もずっと胸に重い痛みが残り続けている。世間ではこういった類の小説を「鬱小説」と呼ぶが、自分は決してそうは思わない。過酷な環境で必死に生きようする子どもたちの綺麗事なしの素晴らしい文学作品だと思う。


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2

息をするために、うそを吐く。

時に人は、目の前の出来事と向き合えないときがある。
そんなとき、人は自分さえも欺いてみせるのだ。

主人公・山田なぎさは中学生ながら、徹底した現実主義者だ。生きるために不要なものは切り捨て、将来は自衛隊に入ると決めているほど、その考えは徹底している。
そんな彼女の元に、現実離れした雰囲気をまとった少女・海野藻屑が転校してくる。
転校初日、彼女は黒板に自分の名を書き、こう自己紹介した。

「ぼくはですね」
藻屑が頑固とした口調で言った。
「ぼくはですね、人魚なんです」
(p.12)

何かと絡んでくる藻屑に、なぎさは当初うんざりしていた。しかし、奇妙な言動の裏にある孤独や脆さに触れるうち、二人は少しずつ距離を縮めていく。

だが、そんな日常の中で、なぎさは藻屑が父親から暴力を受けていることに気づいてしまう。その瞬間から、物語は静かに、しかし確実に不穏さを増し、歪み始めていく。

山田なぎさは、驚くほど真っすぐで、正直で、決してうそを吐かない。
そんな彼女の対極にいるのが、海野藻屑である。

意味のないうそばかりを吐く海野藻屑に、山田なぎさも読者も、苛立ちを覚えずにはいられない。
しかし、そのうその意味に気づき始めたころには、誰もがすでに海野藻屑の虜になっている。

海野藻屑のうそに取り込まれたかのような、夢想めいた感覚のなかで、じわじわと現実の重さを思い知らされる。
そしてそこでこそ、人生を生き抜く強さを手にするのだ。

甘くも痛い読書体験が、あなたの胸を撃ちぬくだろう。


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3

思わず「あぁ」と言葉が漏れる

 作者の桜庭一樹さんは島根県で生まれ現在52歳です。1996年から小説家、ゲームのシナリオライターとして手広く活動しています。また2007年に日本推理作家協会賞、2008年に直木三十五賞を受賞しています。
 本作『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』も代表作の一つです。あとがき、解説を含めて201ページと短いながらも、ラノベ三大奇書の一つと紹介されることもあります。
 本作の主人公は、家が貧しく中学生ながらも実弾(生きていく上で必要なもの。金や衣食住、仕事)を求める山田なぎさと、父親が有名だったミュージシャンで砂糖菓子の弾丸(生きていくために必要の無い嘘や虚言)を撃ち続ける海野藻屑の二人です。ある日なぎさの中学校に転校してきた藻屑は、初めの挨拶で「ぼくはですね、人魚なんです」と自称します。砂糖菓子の弾丸を撃つ藻屑に対して否定や嫌悪の感情を向けるなぎさだが、次第に藻屑について知り、親交を深めていくが…と、なっています。
 私は本作を「イヤな天気が永遠と続く空の雲の切れ間から日の光が少し差し込んできた」と形容します。作中時間は約一か月。この短くも長い時間で実弾を欲する現実的な悩みを抱えるなぎさと、浮世離れした創作のような世界で悩む藻屑。対照的に描かれた二人ですが、本質的にはどこか近しく、縛られ苦悩しているように感じとることができます。最後には少しずつ、ほんの少しずつだけど良い方向へと向かっていき、登場人物の幸せを願うことのできる終わり方が私は好きです。


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4

甘い弾丸は心を揺らす

日本推理作家協会賞や直木三十五賞などを受賞した桜庭一樹さんがおくる、甘くて痛い友情を描いた小説である。


主人公のなぎさの通う学校に突如転校してきた不思議な少女藻屑。藻屑は自分が人魚であると主張したり、自身の痣を海の汚染のせいだと言う。現実主義のなぎさはそんな正反対な藻屑を最初は疎ましく思っていたが、どこか魅力的な藻屑に惹かれていく。そして藻屑の抱えている問題がどんどん明らかになっていって…

この本の最大の特徴は最初に結末が書かれていることである。しかも、それはとても残酷で悲しい結末だ。そのため、2人の少女がぶつかり合いながら絆を深めていく様子を、読者はただ見ていることしかできない。最悪の結末へ物語が向かっていることを知りながら読むのは、中々に耐え難いものがある。

また物語中にはストックホルム症候群や虐待などの社会問題が出てくる。現代社会の問題を提示すると共に、それらに巻き込まれてしまう子供たちの様子が鮮烈に浮かび上がってくるだろう。何の力も持たないつまり、実弾であるお金を持っていない子どもたちには為す術なく、もがくしかない。そんな状況に胸が締めつけられる。

読み終わった時にもう一度読むと、見方や感じ方が変わる本。読む人によって何を感じたかが大きく異なるので、友達などと感想を交換し合うのもこの本の楽しみ方の1つだと思う。実際、友達と意見交換をした際に印象に残った部分が全く異なっていて驚いた。

13歳の少女藻屑が必死に撃ち続けた「砂糖菓子の弾丸」。この本では「実弾」はお金だと提示している。しかし、私は他の意味も含まれていると考えている。あなたも甘い弾丸が本当に「実弾」ではなかったのか、確かめてみませんか?


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5

こころ撃ち抜く甘くて苦い物語

学歴フィルター。就職活動。人間関係。締切。ビジネスマナー。会議。ES。実力主義。
3年生になった途端、本格的にモラトリアム期間を終わらせることを求められ始めた。友人との会話も前よりずっと現実を見据えた話題が多い。私は今、おとなとこどもの狭間にいるのだと思う。

本書も、おとなとこども、あるいは現実と空想の狭間に揺れる人々を描いた物語だ。
主人公の山田なぎさは中学2年生。訳アリの家庭から逃れるために一刻も早く社会に出て、お金という「実弾」を手に入れようと、まだこどもながら自衛官を志望していた。そんななぎさは都会からの転校生、海野藻屑と友達になる。なぎさとは対照的に空想の世界で生きる藻屑は、自分は人魚であり、父親に殴られてできた痣は海の汚染によってできたものと主張する…。

現実を見据えて「実弾」、つまり生存に直接関わるような武器を手に入れようとするなぎさと、「砂糖菓子の弾丸」を使って、空想の世界の中で周りの悲惨な出来事をどうにか飲み込んできた藻屑の対比。ふたりとも同じ「生き抜くこと」を目的にしているからこそ違いが際立つ。面白さ、痛々しさ、苦さ、美しさ―作品の魅力はふたりの在り方の違いに詰まっている。

最終的にふたりは、おとなになるかこどもでいるか選択を迫られることになるが、私自身、未だにおとなになることとこどもでいることのどちらが正しいのか、なぎさと藻屑のどちらに感情移入していいのかわからない。

でもいつかは私もおとなになる日が来る。砂糖菓子の弾丸ではなにひとつ撃ちぬけないという、残酷な現実を知るかもしれない。
だからあえてその時、もう一度ページをめくりたい。「実弾」を手にした私は本書を読んで何を思うのだろう。
同じように狭間でもがく彼女らに撃ち抜かれた心が、読み終えた後の衝撃がどう変わっていくのか。定期的に読み返したい作品。


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6

好きって絶望だよね

悲しい話なのに綺麗な話。桜庭ファンになりました。そんな一冊。


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