書誌レビュー一覧 1件~2件(全2件)

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新世界より

貴志祐介 [著] ; 上, 中, 下. -- 講談社, 2011. -- (講談社文庫 ; [き-60-1], [き-60-2], [き-60-3]).
ISBN:9784062768535
巻号:上
総合評価:

1

進化したけど、退化した世界

私たちは少し未来の世界を夢見るときに、「空を飛ぶクルマ」とか「無人配達」とか、技術的な面で進化していることを想像しがちだと思う。人間自体が進化する可能性はあまり考えない。
この本では「人間は進化したけど、技術的には退化している世界」が描かれている。
1000年後の世界では、人間が念動力(呪力)が使えるようになっていた。この世界にある神栖66町で暮らす渡辺早季も友人たちと平和に暮らしていた。しかし、早季たちは夏期キャンプという行事のときに知ってはならなかった隠された事実を知る・・・
この世界では、スマホ、クルマなどの便利な道具は出てこない。私たちからすれば、不便な生活である。その代わりに人間が進化して、超能力を得ているからさほど不便な生活を送っているとは言えない。ただ、超能力で争いや大量虐殺などが生じる可能性もある。そうならないために異常なまでに管理を行っている世界でもある。人間が進化した代わりに文明が退化し、自由がなくなった世界を感じてみてほしい。


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2

しばらくこの世界観が頭から離れられない!

舞台は1000年後の日本。

主人公は小学生。物語が進むにつれ主人公の成長物語が見れる。

成長するにつれ、彼女は自分の村の不可解な点に疑問を持ち始める。
転校して姿を消す同級生、閉鎖された村、呪術の外での使用の禁止、一定以上の知識を与えない教師。
彼女はどんどん気がついていく、気づいてはいけないことに・・

著者の巧みな文章によってどんどんヒントが転がりそれが蜘蛛の糸のように広がっていく。
ジワジワ手に汗をかくような、何とも言えない気持ち悪さ。
気持ち悪さのヒントを見つけ出そうにも指の間からこぼれるような気味の悪い感触。

誰を信じていいのか、だれが悪いのか、最後まで私たちは気持ち悪さの正体を知ることができない。

ヒロインがそのヒントを紐解いていくと読者にもそれが伝わってきて、まるで新世界を案内されているような気分になる。

私は上巻を読んで衝撃が走った。
衝撃とともに本屋に駆け込み中巻、下巻、と一冊一冊購入し読み進め
今読み終えた。

なんだろう。

この現実に戻ってきたのにあちら側がもどかしいような、この不思議な気持ちは。

どうやら私は新世界から抜け出せられないままのようだ。


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