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鉄は魔法つかい : 命と地球をはぐくむ「鉄」物語

畠山重篤著 ; スギヤマカナヨ絵. -- 小学館, 2011.
ISBN:9784092271524
総合評価:

1

哲学ですか?いいえ、鉄学です!

「鉄は熱いうちに打て」「鉄は使わなければ錆びる」——このように、古今東西、鉄にまつわる言葉は数多く存在する。それほどに鉄は、人々の暮らしと密接に関わってきた素材なのだ。だが、そんな鉄が“魔法使い”だと言ったら、あなたは信じられるだろうか?きっと多くの人が「何を言っているんだ」と思うに違いない。だが、本書を読めば、鉄が“魔法使い”であるということがきっとわかるはずだ。

鉄には、命を育み、地球環境を支える力があるということが、本書で示されている。
たとえば、近年問題になっている“海の砂漠化”。海藻が減り、それを餌とする魚も減少している。この深刻な問題に対し、解決の鍵を握っているのが「鉄」だという。鉄粉を海に撒くことで、海の環境が改善されたというデータが存在するのだ。鉄を巻いたのち、海に植物が生える。まるで魔法だ。

本書は、そうした鉄の効果に注目し、実際に海の環境を良くしようと尽力する漁師によって書かれた一冊である。鉄の力を信じ、行動する漁師の思いが詰まった、まさに“魂の一冊”だ。著者は東日本大震災で被災した経験を経て、鉄に関する研究活動にさらに力を注ぐようになった。その思いはページをめくるごとに、ひしひしと伝わってくる。震災の後に自然をよくする男の姿が瞼の裏に浮かんでくる。

鉄の可能性を追求した本書は、冷たい鉄についての本でありながら、読むたびに心が熱くなる。いつ読んでも熱い——そんな一冊である。


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