「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」(p.256)貧しく孤独な少年ジョバンニと親友カムパネルラが銀河鉄道に乗って夜空を旅する、美しくも切ない『銀河鉄道の夜』や、醜い夜鷹の嘆きと顛末を描く『よだかの星』など、14作品を収録。私が本書に覚えた印象は、「賢治らしくない」である。宮沢賢治といえば、自らが生み出した桃源郷「イーハトーヴ」で展開される豊かな物語が特徴的である。それに較べ、表題作でもある『銀河鉄道の夜』はどうだろうか。貧困、孤独、いじめ。一切から逃げ出し、広大で神秘的な銀河を悠々と旅するも、終いには現実に戻ってきてしまう。しかも、そこには新たな悲劇が待っていた。そして、『よだかの星』。食物連鎖 ー生命が生命であるためにはどうしようもない性ー。それゆえに、否応なしに殺戮者の業を背負ってしまう。そんな相克に苦しむ夜鷹の姿など、どこか陰鬱さだったり、悲劇的なものを含んでいるように感じられた。しかし、逆説的に「生きること」について非常に強く問いかけているようにも感じられた。様々な受難の中で、本当の幸福とは一体なんなのか。食物連鎖の頂点に君臨する我々は、他の生物の屍を摂取してどう生きていくのか。そういう意味ではどこか宗教的で、賢治らしいとも言える。現代を生きる我々は、物質的にあまりにも満ち足り過ぎている。一方で、精神的にはあまりに窮乏している。本当の幸福とは一体何か。他の命を奪ってまで生きながらえる我々は何を為すのか。宮沢ワールドの解釈の仕方は、さながら銀河の如く広大である。ぜひ、本書を通じて、自分だけの終点ー答えーに到着してほしい。こちら、銀河ステーションです。今回は皆さんに銀河鉄道の切符をお渡しさせていただいた。宮沢ワールドの旅を、どうぞごゆっくり。
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