がんで余命わずかとなった芳恵は、娘の紀子が10歳の誕生日を迎えたときにある約束をした。それは20歳になるまで紀子の誕生日にバースデーカードを贈るということ。そして、芳恵がなくなってから1年後。紀子の11歳の誕生日にバースデーカードが届く。20歳まで1年に1度届くバースデーカード。それは紀子にとって何よりの楽しみだった。 私が一番共感したバースデーカードは、紀子が17歳の時のものある。バースデーカードに書いてあったのは、芳恵が中学生時代に過ごした小豆島にタイムカプセルがあり、それを回収してほしいというお願いだった。そこで、紀子は小豆島に行きタイムカプセルを回収することになった。その時に、小豆島に住んでいる芳恵の中学の同級生から、芳恵が生徒会長で、成績優秀で男子にモテモテだったということを聞く。さらに芳恵は好きなアーティストのライブに行くために修学旅行を休むほどの行動力があった。それに対して引っ込み思案で内向的な紀子は芳恵に対して劣等感を感じてしまった。私がこのバースデーカードに共感した理由は、17歳の紀子と同じような劣等感を経験したからである。私には2歳年上の兄がいる。兄は中学生の時、学級委員会や生徒会の副会長をしており、成績優秀で男女問わず友達が多かった。しかし、私は兄と異なり内向的で友達が少ない。だから私は、中学生の時生徒会で活躍している兄に対して劣等感を抱いていた。「私、ホントに同じ遺伝子入ってんのかな」(p.127) この言葉は「兄は私と同じ家族なのになぜこんな性格なのだろう。」と兄に対して劣等感を抱いた中学生の私と重なった。この出来事をきっかけに紀子は芳恵からのバースデーカードを芳恵からの命令のように感じてしまう。そして19歳の誕生日のときにある変化が訪れる。この本は仕事や学校で辛いことがあり泣きたくなった時、背中を押してもらえる作品である。また、この本を読むと家族からの愛を感じることが出来る。そして家族に「ありがとう。」と言ってみたくなる。そんな作品である。
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