私はTwitter(現X)に憑りつかれている。 推しの投稿にいいねとリツイートをするのはルーティンワークである。可愛い動物やほっこり話の投稿に癒され、興味の薄い話題はすぐにスワイプする。ちょっと飽きたなーと思い、Twitterを閉じると、無意識にもう一度Twitterを開いている。もはや一種の病気だ。 Twitterは私をはじめ、情報を求める現代日本人の生活になくてはならないものだ。いいねやリツイートで気軽に情報の拡散ができてしまう。しかし、その何気ない「拡散」で他人の人生をめちゃめちゃにしてしまったら。あなたたならどうするだろうか?
世間的に勝ち組と呼ばれるような企業で働いている山縣泰介は、外勤から帰ってくると上司から呼び出される。上司から聞かされたのは、泰介がTwitterで騒がれている殺人事件の犯人ではないか、というものではあった。 会社から強制的に帰らされるも、自宅からは被害者の生首がでてきた。本当に自分はやっていないのに、証拠を見れば見るほど自分がやったとしか思えない。 ネット上では自称泰介の同級生や自称元部下からの偽の情報が錯綜し、正義感に駆られた人々や警察から身を隠す逃亡劇が始まった。
泰介や、娘の夏美、Twitterで事件の動画を拡散してしまった大学生、警察といった複数の登場人物の視点で物語は展開される。章の終わりに挟まれるTwitterを模した文章が、読者を物語の世界に誘う。 私は何度も「この人が真犯人かもしれない」と思った。しかし、その度にこの考えはすぐに覆されてしまった。 誰が、何を信用できるのか。
この物語に登場する全てを疑って読んで欲しい。
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