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「すーすすしすすしすしん!」 ページを開いた瞬間から、謎のリズムが頭に残って離れない。 この絵本に登場する“すし”たちは、どう見ても食卓の上にじっとしていられないタイプだ。 ぴちぴち跳ねたり、すしんと走ったり、気づけば空まで飛んでいる。 もはや食べ物なのか、生き物なのか、乗り物なのかすらわからない。 だけど、そんなことどうでもよくなるくらい、読んでいると楽しいのだ。
作者が生み出した“すし語”――「すしん」「すしーん!」という音の連なりが、なぜか妙にクセになる。 音のリズムだけで笑えてしまうのは、まるで呪文みたいだ。 読み聞かせをしている大人の方が先に笑い出してしまう、そんな魔力をもっている。
すしの顔はなぜかどれも堂々としていて、自分がシャリとネタのハイブリッド生物であることに誇りを感じているようにも見える。 ページをめくるたびに登場するキャラクターたちはどこか愛嬌があって、読後にはつい「おかわり!」と言いたくなる。
この絵本の魅力は、“意味がわからないのに楽しい”という感覚にある。 大人になると「ちゃんと意味を考えなきゃ」と思いがちだけれど、この本はその常識を軽やかに裏切ってくれる。 ただページをめくって、声に出して、笑えばいい。 それだけで、なんだか世界がやわらかく見えてくる。
“すし”が走り回る不条理さの中に、子どもたちは想像の羽を広げ、大人は忘れていた遊び心を取り戻す。 だからこの本は、読む人すべてに共通する「笑いの原点」を思い出させてくれる絵本なのだ。
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