前提として書いておくが、この本は「ネタバレ厳禁」である。あらすじとして言えるのは、「人間は二回目ですが、オス個体ははじめてです」という出版社の紹介サイトでかかれていることに尽きるとだけ書いておく。 読んで一番に思ったのは「お前が語るのか?!?!」という驚き。ただ、この語り手が絶妙に人間社会の、特に日本という不寛容な個体が多い社会の歪さを皮肉混じりにぶったぎっていく。軽薄で、皮肉混じり。だからスムーズにしっくりとくる。 共同体から切り離されないように、自分も共同体に合わせて行動するといったエピソードが出てくる。本当は自分はAというものが好きだけど、Aというものは社会的にあまりいい評価ではないから、Bというほかのものを好きといっておこう、みたいなことなど、私たちが普段生活しているなかでよくある、ちょっとモヤモヤすることをしっくりさせてくれる。 これが、ただの登場人物がヌルヌル話すだけでは、こんなにしっくりくることはないと思う。この語り手が伝えるからこそ、腑に落ちるのである。 色々と考えさせられるが、時にクスッと笑える場面もある。面白すぎて、止まらなくなること間違いなしだろう。
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