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渋谷にある「秀和幡ヶ谷レジデンス」というマンションをご存じだろうか。かつて「渋谷の北朝鮮」とまで呼ばれたその場所では、理事長による独裁的な運営が行われていた。夜間は住民でさえ出入りが制限され、人を呼ぶと料金を取られ、さらには郵便物を勝手に確認されるという。常識では考えられないルールがまかり通っていたのだ。 そんな理事長の横暴に立ち向かったのが、「マンションを良くする会」の人々である。営業職の住民はその経験を生かして協力者を集め、社長業の住民は人脈を駆使する。立場も職業も異なる住民たちが、ただ「普通に暮らせるマンションを取り戻す」ために力を合わせて戦う。 まるで社会派ドラマのようだが、これは実際にあった出来事であり、記者が実際に取材した内容に基づいて書かれたものだ。理事長へのクーデターは果たして成功するのか?住民の過半数の委任状を集め、新しい理事会を作ることができるのか?目を離せない緊迫の展開が続く。
この本は、マンションや賃貸住宅で暮らす全ての人に関係のある内容だ。 ここまでのあらすじを読んで、「自分のマンションの理事はこんな人ではない。」と感じた方も多いだろう。 しかし、秀和幡ケ谷レジデンスの理事も、最初はごく普通の人だった。初めは「住みやすいマンションを作ろう」としていただけなのだ。 ところが、ほんの些細なきっかけからルールが厳しくなり、住民の無関心も重なって、運営は次第に独裁的になっていった。
私自身もかつて賃貸住宅で暮らしていたが、あの日常が当たり前ではなかったのだと、この本を読んで気づかされた。 もし、ほんの小さなきっかけと私たちの無関心が重なれば、私たちの住まいも次の「秀和幡ケ谷レジデンス」になってしまうかもしれない。 日々の生活の「当たり前の自由」は、実は誰かの努力と自治によって支えられているのだ。私自身、あまり興味がない人間だったのだが理事会の報告会などに参加しようと思った。 マンション運営や住民自治に関心を持つきっかけとなる一冊である。
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