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日々私たちはたくさんの選択をしている。今日何の服を着て大学に行くか。今夜どこに飲みに行くか。今日は誰とご飯に行くか。という小さな選択から、来年からどこに就職するか。という将来の選択まで。
「選択肢はたくさんあったほうが幸せ。」 世間一般ではそう言われている。インターネットやSNSが発達した今の世の中では選択肢はたくさんある。私たちはそれに幸せを感じているだろうか。むしろ選択することに疲弊しているように見える。
この本はインターネットやSNSが発達し、選択肢が多様になった今「経営者」と「消費者」という二つの視点から商品を選ぶこと、選ばれることの苦悩について書かれている。また、数ある選択肢の中で自分の作った商品が選ばれるための方法について詳しく解説している。
「選択肢や判断材料が増えれば増えるほど、実は私たちの意思決定の質と満足度は低下する。」(p.60) これは心理学者のバリー・シュワルツが提唱した「選択のパラドックス」という概念である。選択肢が多すぎると合理的な判断が難しくなり、感情的・衝動的な選択をしたり、最終的には選択を放棄する傾向が強くなるのだ。それが「いつもの選択」「選択の先延ばし」「他者依存の選択」の3つの現象である。 「いつもの選択」とは、例えば「コンビニでいつも買っている飲み物を買ってしまう」「行きつけの喫茶店でいつも同じメニューを頼んでしまう」というように慣れ親しんだ商品を選ぶことで、脳のエネルギーを抑えようとしてしまう現象である。「選択の先延ばし」とは、「もう少し情報を集めてから」と考え、結論を先に伸ばしてしまう現象である。「他者依存」とは、「みんな選んでいるから」「友達がオススメしているから」という理由で選択することである。これは選択の責任を他者に押し付けることで、「もっと良い選択肢があったのでは?」という後悔を減らそうという防衛機能が働いている。
これらの現象が起こる理由は、選択肢が増えたことで「失敗しない選択」が求められるようになり、そのプレッシャーから「選ぶこと」を避けてしまっているからである。
私は今まで「選ぶ」ということに対してポジティブなイメージを持っていたため、この本では選択することの負の側面にフォーカスを当てられていて驚いた。しかしこの本を読み進めると、日常生活の中でこれら3つの現象が起こっており、無意識に選ぶことを放棄している自分に気が付いた。また、選択肢が多くなった現代では、一番良いモノを求めることで、「本当にこれでよかったのだろうか」と考える機会が多くなり、選択することが精神的なストレスになっていると感じた。
現代の人々は選択することを面倒だと感じ、選択にコストをかけないようにしている。その中で選ばれる商品を作るにはどうすればよいのか。選ぶ立場の人も、選ばれる立場の人もぜひ読んでほしい。
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