書誌レビュー一覧 1件~1件(全1件)

イメージ

名無辞典 : 決定版

シモムラ著. -- 朝日新聞出版, 2026.
ISBN:9784022521361
総合評価:

1

No.45 世界の「あれ」を正式採用!

【名無(ななし)】

名詞。

名前がないために、「なんとなく」で済まされてきたもの。


そういうものは、意外と多い。

「あれ、なんて言うんだっけ。」

思い浮かべられるのに、呼ぶことができない。

説明はできるのに、言葉だけが見つからない。

そんな日常の"取りこぼし"を集めたのが本書である。

集合写真で欠席した人のために空けられた、あの少しだけ不自然な空間。

思わず「あるある」と笑ってしまうのに、誰も名前を知らない現象。

この本は、そんな"名無し"たちを辞典という形で採集している。

ページをめくるたび、「こんなものまで見つけていたのか」と驚かされる。

でも、一番驚いたのは、その言葉ではなかった。

読みながら、気づけば私も名前をつけ始めていたことだ。


【読書迷子(どくしょまいご)】

名詞。

本屋で目的の一冊があったはずなのに、気づけば何冊もの背表紙に寄り道し、最初に探していた本を忘れてしまう現象。


こんな言葉があってもいいのかもしれない。

そう思えた瞬間、この本は辞典ではなくなった。

「読む本」から、「参加する本」へと変わったのだ。

考えてみれば、名前をつけるという行為は、「見つける」ということに似ている。

昨日まで背景だったものが、言葉を与えられた瞬間、急に輪郭を持ちはじめる。

世界が変わるわけではない。

ただ、自分の見え方が少しだけ変わる。

その変化が、なんだかうれしかった。

読み終えたあと、駅のホームでも、教室でも、コンビニでも、「これにも名前があるのだろうか」と考えてしまう。

そして、もしまだ名前がないのなら、自分でつけてみたくなる。

この本が教えてくれたのは、新しい言葉ではない。

「名前は、見つけるものでもあるけれど、つくるものでもある」ということだった。


【無名発見症(むめいはっけんしょう)】

名詞。

本書を読み終えたあと、これまで見過ごしていた「名前のないもの」に気づき、つい名前をつけたくなってしまう現象。

※一度発症すると、日常のあちこちに潜んでいる「まだ名前のないもの」に敏感になる恐れがある。

※現在のところ、有効な治療法はない。


0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。このレビューは参考になりましたか? はい いいえ