書誌レビュー一覧 1件~2件(全2件)

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昔話法廷

NHK Eテレ「昔話法廷」制作班編 ; 今井雅子原作 ; 伊野孝行挿画 ; [season1], season2, season3. -- 金の星社, 2016.
ISBN:9784323073651
巻号:[season1]
総合評価:

1

昔話の新解釈 法廷で語られる新たな真実

皆さんは昔話を読んだ時、そのストーリーに疑問を抱いたことはないだろうか?この場合の疑問は非現実的な部分ではなく、現実的視点で見たときに生まれるもののことを指している。例えに「三匹のこぶた」をあげてみると、狼に襲われた三匹のこぶたはそれぞれ自身の作った家に逃げ込むもののことごとく吹き飛ばされしまい、最後の末っ子の豚の作ったレンガの家に避難し、煙突から侵入した狼を煮えた湯の入った釜に落とし殺害する、これがこの物語の大まかな内容である。現実的な視点でこれを見れば末っ子の豚には殺人、いや殺狼罪が成立してしまうのではないだろうか?
この本はそんな昔話における様々な事象を元に現実的な視点で再解釈し、被告人となった昔話の登場人物たちを裁き、有罪か無罪かを考えていくという内容である。
この本の重要なポイントは私たちが知っている昔話の中では語られなかった登場人物たちの背景が語られる点である。その行動をするにあたってやむを得ない事情があった背景や、被害者、加害者の過去など、様々な背景が裁判の中で語られ一概に有罪か、無罪かを決めることが出来なくなっているのである。
貴方も裁判を傍聴している気持ちでこの本を読んで、昔話の新たな真実を知り、被告人の判決を考えてもらいたい。


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2

エンディングを選ぶのはあなた

 昔話は本来残酷だ。
 それは多くの人が知っていることで、なんとはなしに辻褄合わせで良い話になった。そんな背景をを感じたことはないだろうか。
 その辻褄を誰しもが納得する形にする。
 それができるのは、法廷だけ。
 法廷で真偽を問い、勝敗を喫する。
 三匹の子豚は故意の殺人であったのか。
 かちかち山の狸を殺そうとしたうさぎは悪か、それともお婆さんを殺した狸が悪か。

 あなたは裁判員に選ばれました。
 判決を決める一人です。
 どんな経緯で選ばれたかはわかりません。
 あなたの背景も知りません、どんな昔話を聞いて育ったかも知ることはできません。
 しかしあなたには考える義務がある。
 昔話という誰しかもが知っている事件に判決を下す義務が。
 どうかめでたしめでたしと言ってください。
 それでは開廷します。


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