8050問題とは、80代の親が、引きこもりの50代の子どもを養っている家庭が増えているという問題である。 本書はこの8050問題の家庭になりつつあった一家を舞台にした、引きこもりといじめ問題に一石を投じた作品である。いじめが題材の物語の大半は、登場人物が学生のことが多いが、本書ではいじめに関わった人たちのその後が書かれた珍しい話となっている。 50代の大澤正樹の20歳になった息子、翔太が中学生の頃にいじめを受け、引きこもり始めて7年経った。夜な夜な窓ガラスを破壊したり、家中を徘徊する翔太。正樹の娘が結婚するため、この状況を何とかしようと、正樹は引きこもりの原因となったいじめの加害者達を訴えることにした。しかし、とあることがきっかけで正樹と翔太は喧嘩をしてしまい、翔太は家の窓から飛び降り、怪我を負ってしまう。 翔太と正樹。翔太といじめ加害者たち。それぞれの策略と思いが交差しあう。
正樹、翔太、そしていじめ加害者たち。登場人物のほとんどが自分本位で小賢しい。読んでいて登場人物達に腹が立つこともあるが、正樹と翔太の不調和だった関係がお互いが本心をさらけ出すことで良好になり、ひとつの結末へと進んでいく過程は、読み進めるにつれ途中の腹立ちが嘘のように収まり、スッキリと読み終えた。 親は子のことをなんでも知っていると思いがちである。実際、作中の正樹もそうだった。しかし、そのような事はない。私自身、父との友好関係は良い方だと思うが、父に秘密なことなど沢山ある。だが、そんな父親が自分を信じて行動してくれるということは、とても心強く嬉しい。それは当たり前ではなく、尊いものだと思う。 家に帰ったら父に、家族に、感謝を伝えよう。
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