昨年、広島県へ一人旅をした。その際、広島市内にある原爆資料館に赴いた。地元のおばあさんがガイドをしてくれ、一緒に周辺をまわる。イスにすわって一休憩したとき、おばあさんはこう話した。「あんたぐらいの年の子が、たくさん亡くなったんよ。なんでじゃろうねぇ」
中東パレスチナ戦争は、いぜん終わりが見えない。ウクライナも戦火にさらされ続けている。私はこの二つの戦争について、全く違う場所で起こっている別なものだと思っていた。しかし元をたどれば、しだいに似た顔をもつもの同士に見えてくるのだ。
著者は、テレビ東京の夜番組でおなじみの池上彰氏だ。丁寧な語り口調と偏らない姿勢は、本書にもしっかり表れている。世界の戦争について広く、そして詳しく記した一冊である。入門書としてもお薦めしたい。
平和は、願うだけでは訪れない。とめどない争いの連鎖を見つめると、心からそう感じる。自国の失敗だけではなく、他国の失敗からも知って得られることはとても多い。いさかいを避ける最善の策は、罵り合うことではなく、学び合うことなのである。 同じ事を繰り返さないために。
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