物足りない。 昨今テレビで動物番組を見ていて、思うことだ。もちろんワンちゃんやネコちゃんはかわいいし、人とニホンザルの戯れは微笑ましい。でも、これじゃない。全然満足できない。 クセものぞろいの自然界を硬派に表現し、かつクスッとさせる小ネタを挟む。そんな番組はないものか…。わがまま極まりない願望である。しかし私は、この悩みを見事に解消させる出会いをした。しかもテレビでではなく、図書館で。
本書は名前の通り、著者選りすぐりの「へんないきもの」を集めた一冊である。ツノトカゲ、オニイソメ、ミズヒキイカ等々、知名度が高いとはいえない生物たち。その数、全64匹。 見開き1ページで、左には生物紹介、右には大きなイラストという配分だ。たいへん読みやすい仕様となっている。しかも生物、いやいきもののイラストはまるで写真のような精密性がある。例えるなら、一種類を大きく扱う図鑑といったところだ。
しかしこの本、とても小学館や学研といった、いわば公的な大手社からは出せないような内容となっている。筆者の早川いくを氏は、作中でしばしばいきもの達へ、なかなかのイジりや毒舌を浴びせかけるのである。 「『オジサン』という名の魚もいる。海面を指さして『アッ、オジサンだ!』などと叫ぶ人がいても、別に溺死体を発見したわけではない。」p.40 そして早川氏の矛先は、ときに我々が生きる現代社会へも向いていくのだ。
本書をじっくり楽しむことができたが、ひとつ失敗したことがある。それは、電車の中で読んでしまったこと。クスッとどころではない。声を抑えるのに必死だった。この本を手に取ってくれた方には、その点くれぐれも注意いただきたい。
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